成長企業でRPAを推進するには?ドーム社のRPA活用術
大手企業の間ではすでに広がりを見せているRPAですが、社員数がこれから伸びていくような成長企業への導入はそれほど進んでいないのが現状です。その背景には運用に対する不安やコストの問題があるとされています。しかし今後さらに深刻となる人手不足を考えると、成長企業ほどRPAによる業務の自動化が必要です。
そこで成長企業でRPAを活用して成果を上げている例として、「パーソルのRPA」がRPAツールの研修でご支援させて頂いた、株式会社ドーム様(以下:ドーム社)にお話を伺いました。スポーツブランドの「アンダーアーマー」を展開することで知られるドーム社ではどのようにRPAを活用しているのか、前編・後編に分けてたっぷりとお伝えします。
前編では導入の経緯やRPAプロジェクトの推進方法について、デジタル企画部エンタープライズチームの若林 良徳氏とビジネスプランニング部オペレーションチームの小谷 紗智子氏にお話を伺いました。
RPA導入の経緯
――まずはドーム社の紹介からお願いいたします。
若林氏:1996年設立の比較的新しい会社で、社員数は2020年1月6日現在で372名です。アンダーアーマーの日本の総代理店として、スポーツアパレル・スポーツサプリメント・テーピングの開発と販売を行っています。プロのアスリートへのパフォーマンスディレクションも事業のうちの1つです。実際会社の1階がトレーニングジムとなっているので、そこでアスリートのサポートを行っています。
――お二人の業務について教えていただけますでしょうか。
若林氏:デジタル企画部で、社内で使っているシステムの運用や新しいシステム導入の企画をし、導入からその後のサポートまでを行っています。
小谷氏:私はビジネスプランニング部で、会社の売上管理や店頭消化を見て色々な施策を企画実行するための、オペレーション業務を担っています。
――現在のRPAの導入状況と、導入された経緯について教えてください。
若林氏:現在、7部署で合わせて80体のロボットが稼働しています。当初はマンパワーで行うマニュアル作業が多く残業が多くなりがちのため、業務プロセスを見直す必要がありました。業務の改善点を洗い出していた時にRPAの存在を知り、導入することを決めました。
――残業時間の他に抱えていた課題はありますか。
小谷氏:現場の社員に業務改善に関するIT知識がないことが一番の課題だったように思います。IT知識がないので業務を改善したいと思っても、「どのようにしたら良いか分からない」という状態でした。
若林氏:RPAを導入すれば、現場の社員も業務改善に積極的に取り組んでくれるのではないかと思い、RPAによってルーチンワークが当たり前となっている状態が変わることを期待しました。
――導入検討を進める上で難しかった点はありますか。
若林氏:最初からRPAを導入する方向で考えていたので、あまり難しいと感じることはありませんでした。ただRPAツールを選ぶ際に、どれを採用するかで迷いました。なるべくコストがかからず、サーバーを構築する必要がなく簡単に導入できるという条件で探して候補を絞りました。検討中のRPAツールのトライアル版を使ってみたところ、操作に慣れてしまえば現場の社員でも簡単にロボットが作れると感じ、これはぜひ本格的に使ってみたいという話になりました。
部署ごとにRPA担当者を決めて広める
――RPAを導入したものの、社内に広めることが出来なくてRPA推進がなかなか進まないという話をよく耳にします。ドーム社はどのようにして社内に広めていったのですか。
若林氏:最初は3部門からスタートし、2018年3月にそれぞれの部署から担当者を選出してもらいました。そのうちの一人が小谷です。
まず2日間のトレーニングをパーソルプロセス&テクノロジー社にやっていただき、RPAツールの基本的な使い方を覚えていただきました。
トレーニングを受講したからといってすぐにロボットが作れるわけではないので2,3週間私がサポートしながら、実際に自分たちが行っている業務の1つを自動化して貰いました。その後自力で他の業務も自動化出来るようになりました。
各担当者が開発したロボットを社内のソーシャルメディアに共有したことで、それを見て自分のところでもロボットを開発したいという部署がいくつか出てきました。そこで、それぞれの部署の担当者に2期メンバーとしてトレーニングを受けてもらい、最初の時と同じように私がサポートをしながらロボットを開発してもらいました。
――社内に広めていく中で見えてきた課題はありますか。
若林氏:ロボットを開発したい人が増えてきたので、きちんとしたルール作りをしなければならないと思っています。今までは開発するごとに管理台帳に記載してもらう形で個々のロボットを把握出来ていたのですが、数が多いためにその方法だと把握しきれなくなり、現在は各担当者が自分達で管理している状態です。ロボットをどのように管理するかについてしっかりとルールを決める必要があると感じています。
現場のモチベーションを保つ工夫
――RPAロボットは開発したら終わりではなくその後の運用が重要です。そのためには現場のモチベーションを保つ必要があると思うのですが、何か工夫されていることはありますか。
若林氏:毎週水曜日に1時間「RPAラボ」を開催しています。「RPAラボ」とは開発者が集まって開発で困っていることを話したり、その時に開発したいロボットを自由に作ってもらう集まりの場です。
小谷氏:RPAは継続的に勉強する必要があると思います。せっかく勉強しても、しばらく何もしないでいると忘れてしまうので、場所と時間を決めて定期的に集まることによりモチベーションを維持出来ると思います。
相手が自席で作業中だと聞きたいことがあっても聞きづらかったりしますが、「RPAラボ」はオープンな場で、気軽に何でも聞いて良いことになっています。また、ITエンジニアも出席しますので、専門的なことについて相談することが可能です。
このようなオープンな場を作ることで、RPAに対するプラスのイメージも社内に広められるのではないかと思っています。
まとめ
最初に小さな単位から始めて徐々に社内に広めていくことで、RPAに対する不安を払拭することが出来ます。また、定期的に集まる機会を設けることにより、現場のモチベーションを保つことが可能となります。これらは成長企業ならではの機動力を生かすことで実現したと言えるでしょう。
後編では、RPAによって創出された時間で理想の働き方を実現した小谷氏のストーリーについてご紹介します。
ドーム社の導入事例後編はこちらをご覧ください。
>>【参考】RPAで新しい働き方を手に入れる――成長企業ドームの事例
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