経理分野におけるAIの役割は?導入メリットや活用方法・事例を紹介
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2023年5月のG7広島サミットでは、生成AIが重要なテーマの一つとして取り上げられました(※1)。AIの利活用を巡る関心は、国内外で急速に広がりつつあります。
社内業務へのAIの導入も進んでおり、総務省が2024年に行ったアンケートでは、46.8%の企業が「メールや議事録、資料作成等の補助」にAIを活用していると回答しました(※2)。
経理業務は手順が決まった定型的な作業が多く、AIによる自動化が期待される分野の一つです。しかし、AIやRPAを導入したからといって、経理担当者の仕事がなくなるわけではありません。
本記事では、経理分野においてAIが果たすべき役割や、AIを活用するメリット、効果的な活用方法について解説します。
※1総務省「広島AIプロセスについて」
>> https://www.soumu.go.jp/hiroshimaaiprocess/
※2総務省「令和6年版情報通信白書」
>> https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd151120.html
経理分野におけるAIの役割

経理業務は、日単位・月単位・年単位でやるべき仕事が決まっているため、AIで自動化したいとお考えの方も多いでしょう。
近年、AIは機械学習やディープラーニング(深層学習)といった革新的な技術の登場により、目覚ましい発展を遂げています。特に、2022年ごろから急速に普及したのが生成AIです。
内閣府では、AIについて以下のように述べています。
“人とおおむね同等、分野によっては人を上回る質のアウトプットを驚異的な速度で生成可能となったAIは、ビジネスや学術活動に幅広く活用され始めている。”
引用:内閣府「世界経済の潮流 2024年 Ⅰ」p11
>> https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf
しかし、現状のAIは決して万能ではありません。AIが不得意とする作業や、人ならではの価値を発揮できる作業もまだ残っており、人とAIの役割分担が求められます。
経理分野においても、AIが担当すべき業務と苦手とする業務の違いを知り、AIの役割を正しく把握することが大切です。
経理分野においてAIが担当すべき業務
経理分野においてAIが担当すべき業務は以下の通りです。
- 大量のデータ処理・分析が関わる業務
- 手順が決まった定型的な業務
AIは大量のデータ処理・分析を得意としています。2000年代に入り、機械学習の手法の一つであるディープラーニングが登場すると、テキストデータだけでなく画像データを識別したり、人間が日常的に使う自然言語を処理したりできるようにもなりました(※)。
経理分野においても、日々の財務データを自動集計したり、貸借対照表や損益計算書をリアルタイムに可視化したりするなど、さまざまな役割が期待できます。
また、手順が決まった定型的な業務は、以前からAIやRPAが得意としてきた作業です。日次の伝票処理から、年次の決算書・税務申告書の作成まで、手間のかかる定型業務をAIで自動化できます。
※総務省「令和6年版情報通信白書」
>> https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd131110.html
経理分野においてAIが苦手とする業務
一方、AIへの置き換えがまだ難しい業務には、以下のようなものが挙げられます。
- 複雑なコミュニケーションが関わる業務
- 経営に関する重要な判断が求められる業務
AIは他者への高度な共感や、社会的な協調性を必要とする業務を苦手としています。
今後も、経営陣や他部署との臨機応変なコミュニケーションが求められる業務は、人ならではの領域であり続けるでしょう。
ただし、簡単な問い合わせ対応程度であれば、事前にQ&Aデータなどを学習させ、自動化することが可能です。
また、現状のAIには、正確なデータを学習したとしても、誤った回答や裏付けのない回答をするリスクがあります。
特に生成AIでは、事実と異なる情報をもっともらしく回答する「ハルシネーション」が問題となっています。
経営方針の決定など、重要な意思決定をAIに任せきりにすると、深刻な問題を引き起こすかもしれません。AIを活用して経営判断の精度を高めるなど、補助的な使い方をすると良いでしょう。
AIやRPAの登場で経理の仕事はなくなる?

AIやRPAが急速に普及した結果、一部で「経理の仕事はなくなるのでは?」という声が聞かれるようになりました。
特に生成AIは、タスクレベルの生産性を大きく向上させるといわれており、アメリカのように雇用・採用活動への影響が既に出ている国も存在します。
しかし、現状のAIやRPAは、全ての経理業務を自動化できるわけではありません。一部の経理業務はなくなる可能性がありますが、AIによる自動化が難しい分野もまだ残っています。
ここでは、AIやRPAの登場による経理業務への影響について解説します。
全ての経理業務を自動化できるわけではない
AIによる自動化が難しい分野は、大きく分けて3つあります。

経理業務の中には、AIで自動化できるものもありますが、創造的思考やソーシャルインテリジェンス、非定型的な対応が求められる業務は、人だからこそ価値が発揮できる分野です。
例えば、AIは財務データを処理・分析することに長けていても、AIによる分析結果を基に判断し、経営上の重要な意思決定を行う仕事は人間のほうが適しています。
一部の経理業務はなくなる可能性がある
ただし、一部の経理業務はこれからAIやRPAに取って代わられる可能性があります。特に手順が決まっており、手間のかかる経費精算業務は、AIに任せるメリットが大きい仕事の一つです。
- 交通費精算
- 立替金精算
- 仮払金精算
このような業務をAIに置き換えることで、人件費の削減や空いた人員の再配置など、さまざまな効果が期待できるでしょう。
人が担う業務とAIに任せる業務を切り分け、AIとの共存を前提として、業務プロセスを最適化していくことが大切です。
経理分野でAIを活用する4つのメリット

経理分野でAIを活用するメリットは4つあります。
- 業務を効率化できる
- 業務の標準化を図れる
- コア業務に集中できる
- 経営判断の精度が上がる
業務を効率化できる
近年では、AI搭載型の経理システムも登場しています。データ入力や処理など、手作業では時間がかかる作業をAIで自動化することで、業務効率化につながります。
また、入力ミスや計算ミスといったヒューマンエラーを防止し、経理処理の精度を高めることも可能です。
特に生成AIへの期待が大きく、総務省が2024年に行ったアンケートによると、約75%の企業が「業務効率化や人員不足の解消につながると思う」と回答しています(※)。
※総務省「令和6年版情報通信白書」
>> https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd151120.html
業務の標準化を図れる
AIを搭載した経理システムを導入すれば、経験の浅い経理担当者でも、ベテラン従業員と同じレベルで仕事をこなせます。経理業務の一部をAIに置き換えることで、業務の属人化の防止にもつながるでしょう。
経理システムの中には、AIによる学習機能が備わったものもあります。自社のルールや業務フローをAIに学習させることで、経理業務の標準化が可能です。
コア業務に集中できる
効率や生産性が求められる業務はAIに任せることで、経理担当者が他の業務に集中できます。財政状況の分析や、経営陣への情報提供など、企業の成長につながるコア業務に注力することが可能です。
また、管理職の場合は、これまで事務処理などに費やしていた時間を、組織のマネジメントに当てられます。
「経理分野の人員が不足していて、従業員が日々の雑務に追われている」といった課題を抱えている方は、AIの導入を検討してみましょう。
経営判断の精度が上がる
AIなら、膨大な量のデータであっても迅速に処理できます。日々の財務データをリアルタイムに集計し、日次・月次でレポートを作成することも可能です。
人の手では手間のかかる集計・分析などの作業をAIが担うことで、「資金繰りに問題はないか」「経営改善が必要なポイントはないか」など、重要な予測や知見を迅速に得られます。分析結果に基づいて、従来よりも精度の高い経営判断を行えるでしょう。
経理分野におけるAIの活用方法

ここでは、経理分野におけるAIの活用例を5つ紹介します。

経費や請求書の処理
AIを搭載した経理システムを導入することで、経費精算や請求書の処理を効率化できます。
銀行口座やクレジットカードの明細などと連携し、仕訳を自動化できるため、手作業でデータを入力したり転記したりする手間がかかりません。
経理システムによっては、AIが過去の経費データを学習し、適切な勘定科目を提案することも可能です。
紙の領収書やレシートを受け取っても、AI-OCRなどでスキャンし、自動で読み取れます。AI-OCRは従来のOCRと比べ、読み取り精度が大きく向上しているため、手書きの文字も問題なくスキャンできます。
財務諸表の自動生成
経理業務の中でも、担当者にとって負担が大きいのが、貸借対照表や損益計算書をはじめとした財務諸表の作成です。
財務諸表の作成に時間がかかると、決算の遅れにつながる可能性があります。
AIを有効活用すれば、過去の財務データを集計し、財務諸表を自動で生成できます。経理システムによっては、貸借対照表や損益計算書の他、製造原価報告書や株主資本等変動計算書、個別注記表などの作成も可能です。
財務諸表の作成をスピードアップすることにより、決算早期化にもつながるでしょう。
予実管理
経理分野では、予実管理にもAIが用いられています。例えば、過去の予算と実績に関するデータをAIに学習させると、将来必要な予算計画を自動で立てることが可能です。
月次単位で予算計画を作成している企業の場合は、AIの導入によって大幅な工数削減が期待できるでしょう。
また、AIを活用し、予実管理の精度を高めることで、より正確な経営判断を行えるようになります。
リスク管理
AIは経理分野におけるリスク管理にも効果的です。AIを活用して、財務状況を可視化すると、不正会計をはじめとしたリスクを抑えられます。
例えば、AIが取引データなどをリアルタイムに監視するツールを導入すれば、架空の売上や経費を計上するといった不正の兆候の早期発見につながるでしょう。
既に一部の監査法人では、財務情報の監査にAIを取り入れ、効率化する取り組みが本格的に始まっています。
会社規定の作成
AIの中でも、生成AIはテキストや画像、映像など、多様な形式(マルチモーダル)でのアウトプットが可能です。
そこで生成AIを活用し、経理に関する社内ルールの叩き台を作成するといった使い方もできます。
例えば、経理業務のマニュアルに当たる「経理規程」の作成支援のため、AIを活用する事例も見られます。
経理規程をAIチャットボットと連動させれば、社内の問い合わせ対応の自動化にもつながるでしょう。
まとめ
経理分野では、AI(生成AI)やRPAなど、業務効率化につながる新しい技術の導入が進んでいます。
特にAIは、大量のデータ処理や分析、定型的な業務の自動化を得意としており、AI搭載型の経理システムも登場しています。
例えば、経費の精算や伝票処理、財務諸表の作成、不正会計の検知など、さまざまな業務をAIで自動化することが可能です。
一方、現状のAIには、高度なコミュニケーションや、重要な意思決定が関わる業務など、苦手とする領域も存在します。
全ての経理業務をAIに置き換えるのは難しいため、AIの特性を理解した上で業務フローを構築することが重要です。
生産性を必要とする業務はAIに任せ、創造的思考や非定型的な対応が求められる業務は経理担当者が行うと良いでしょう。
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ご支援実績 紹介

食品製造業における弊社のご支援事例をご紹介いたします。
こちらの企業では、既にRPAツールを導入していましたが、中央集権的な管理により自動化対象が限定され、現場のルーチンワークの自動化が進まないという課題を抱えていました。
そこで、「定例業務の標準化及び効率化」「運用ルールの統一化」「開発支援ツール活用に向けた運用体制の構築」を目指した取り組みを実施。
研修プログラムを活用して開発者のスキル向上を図り、現場での業務自動化推進力を強化しました。
また、地方拠点を含む運用ルールの最適化を実現し、運用の安定性を向上。
結果として、累計8,000時間の工数削減を達成し、業務負担の軽減と効率化を促進しました。
このように、AIやRPAの適切な活用と人材育成を組み合わせることで、業務効率化だけでなく、業務の精度や安定性の向上につながることが示されています。経理分野でも同様に、人と技術が協力し合うことでより良い業務フローを構築できるでしょう。
パーソルワークスイッチコンサルティングでは、デジタルとコンサルティングを掛け合わせたご支援を行っています。
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