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経理DXとは?必要性や具体的な進め方をツール活用事例とともに解説

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経理業務は専門性が高く、慢性的な人員不足に陥りやすい分野の一つです。ベテランの経理担当者に業務負担が集中する、「業務の属人化」も大きな課題となっています。

そこで注目されているのが、経理業務のDX(デジタル・トランスフォーメーション)です。データやデジタル技術を活用し、経理部門を戦略的に効率化しましょう。

本記事では、経理DXの意味やこれからの必要性、具体的な進め方について解説します。

経理DXとは?意味や必要性を解説

DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉が誕生したのは、2004年のことです(※1)。それ以来、日本でも大企業や金融業・保険業などの業種を中心として、DXに向けた取り組みが行われてきました。

情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2024調査」によると、日本でDXに取り組んでいる企業の割合は73.7%です。2022年の米国企業(77.9%)の水準に近づくほど、DXへの関心は着実に高まっています(※2)。

DX化が進んでいるのは、企業に直接利益をもたらす部門だけではありません。経理部門をはじめとしたバックオフィス分野でも、データやデジタル技術を用いた業務改革が行われています。

ここでは、経理部門におけるDXの定義や、そもそもなぜDX化が必要なのかについて解説します。

※1 経済産業省 中小企業庁「「デジタル・トランスフォーメーション」DXとは何か? IT化とはどこが違うのか?」
>> https://mirasapo-plus.go.jp/hint/15869/

※2 情報処理推進機構「DX動向2024」p3
>> https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/discussion-paper/eid2eo0000008jv4-att/dx-two-cliff-walls.pdf

 

経理DXとはデジタル技術を活用して経理業務を変革すること

経済産業省の「デジタルガバナンス・コード」において、DXは以下のように定義されています(※)。

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。”

※経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」p3
>> https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc3.0.pdf

つまりDXとは、製品やサービス、ビジネスモデルといった利益を生み出すものだけでなく、業務や組織、プロセスなど、企業活動全体を変革していく取り組みです。

経理部門におけるDXは、「データやデジタル技術を活用して、会計や財務に関する業務そのものを変革し、競争上の優位性を生み出すこと」と定義できます。

例えば、経理システムの導入によって生産性を向上させたり、帳簿書類をペーパーレス化して、リモートワークなどの働き方改革を実現したりするのが、経理DXの一例です。

 

経理DXはなぜ必要?

経理DXが必要とされる理由は2つあります。

  • 定型業務が多く、担当者にかかる負担が大きいため
  • 電子帳簿保存法やインボイス制度など、法改正に対応するため

経理業務は、伝票の作成や仕訳など、手順が決まった定型的な作業が中心です。決算が近づく時期や、年末調整の時期はとくに業務量が増加し、経理担当者の負担も大きくなります。

紙ベースの業務プロセスから、ペーパーレス化された業務プロセスへ移行することで、担当者の負担軽減につながるでしょう。

また近年の電子帳簿保存法やインボイス制度などの法改正により、経理DXは避けられないものとなっています。

例えば、2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法では、国税関係の帳簿書類のデータ保存について、抜本的な見直しが行われました。2024年1月からは、電子取引に関するデータ保存が完全義務化されています(※)。

紙中心の業務プロセスのままでは、今後の法改正に対応できなくなり、業務の停滞を招く恐れがあります。経理DXを実現し、外部環境の変化に強い経理部門を構築しましょう。

※経済産業省 中小企業庁「どうすればいいの?「電子帳簿保存法」」
>> https://mirasapo-plus.go.jp/hint/17457/

 

経理部門のDX化を進めるメリット

経理部門のDX化を進めるメリットは4つあります。

  • コスト削減につながる
  • ペーパーレス化を図れる
  • ヒューマンエラーを防止できる
  • ガバナンスを強化できる

 

コスト削減につながる

経理部門全体のDX化によって、大幅なコスト削減が期待できます。

経理システムなどを活用し、人の手で行っていた定型業務を自動化することで、人的コストの削減が可能です。

年間の業務時間が短縮されれば、残業代の削減にもつながるでしょう。

また帳簿書類をペーパーレス化することで、印刷や保管、郵送にかかるコストも削減できます。

 

ペーパーレス化を図れる

帳簿書類のペーパーレス化には、以下のようなメリットもあります。

  • 紙の書類を印刷したり、ファイリングしたりする手間がなくなる
  • 書類の保管スペースが不要になるため、用途を変更できる
  • 日付や取引先名などで検索し、探したい書類をすぐに発見できる
  • 経理担当者もテレワークやリモートワークができる

電子帳簿保存法の改正内容や、今後広がるであろう電子インボイス(デジタルインボイス)のやりとりに対応する上でも、ペーパーレス化は欠かせません。

 

ヒューマンエラーを防止できる

経理業務には、領収書の仕訳や伝票の起票など、人の手で行う作業がたくさんあります。会計ソフトを導入していても、データの入力や転記は手作業で行っている、という企業も多いでしょう。

経理DXに取り組み、業務プロセス全体を自動化することで、日々の業務で起こりやすい入力ミスや計算ミスを防止できます。

導入する経理システムによっては、AIや機械学習を用いたサポートも可能です。経理業務の精度が大きく向上するため、修正作業にかかる手間も減らせます。

 

ガバナンスを強化できる

経理DXには、不正会計や決算の遅れを防止し、企業のガバナンス強化につながるというメリットもあります。

経理システムを導入することで、人の手による帳簿書類の偽造・改ざんが行われにくくなります。そのため、会計基準や法令に沿って正確に経理業務を行うことが可能です。

また経理処理の高速化によって、決算の遅れを未然に防止できます。決算早期化の実現により、ステークホルダーからの信頼向上にもつながるでしょう。

 

経理DXの具体的な進め方

ここでは、経理DXの進め方を3つのステップに分けて紹介します。

  • 経理に関する課題を明確にする
  • 業務改善につながるシステムを導入する
  • 運用しながら改善を図る

 

経理に関する課題を明確にする

経理DXは、「紙の帳簿をデジタル化する」「会計ソフトのデータをほかのシステムと連携する」など、身近なところから進めていくことが大切です。

自社の業務フローや導入しているシステムを洗い出し、解決すべき課題の優先順位付けを行いましょう。経理部門の担当者にヒアリングし、現場の目線から課題や要望を挙げてもらうのも効果的です。

まずは簡単なデジタル化から着手し、徐々に取り組みを拡大しながら、中長期的にDXの実現を目指しましょう。

 

業務改善につながるシステムを導入する

解決すべき課題がわかったら、業務改善につながるツールやシステムを導入しましょう。

例えば、経費の申請・承認や仕訳に手間がかかっている場合は、経費精算システムの導入を検討すると良いでしょう。

新しいシステムを導入したら終わりではなく、データの取り扱いや保存方法など、運用ルールを決めることも大切です。

導入後の運用がスムーズに行えるように、経理担当者への研修やフォローアップを実施することをおすすめします。

 

運用しながら改善を図る

システムの導入初期は、不明点やトラブルが発生することがあります。新しいシステムを運用しながら、課題や問題点がないかモニタリングを行い、繰り返し改善していきましょう。

最初からすべての経理業務をDX化するのではなく、小さな成功体験を積み重ねていくことが、経理DXを成功させるためのポイントです。

 

効率的に経理DXを実施するためのコツ


経理DXを効率的に進めるコツは2つあります。

  • 自社に合ったツールを活用する
  • セキュリティ対策を検討する

自社に合ったツールを活用する

ツールやシステムを選ぶ際は、予算や機能面だけでなく、以下のような視点からも比較検討を行うことが大切です。

  • 自社の経理部門の課題解決につながるか
  • 自社の業務フローに無理なく組み込めるシステムか
  • 自社が導入しているシステムとデータを連携できるか
  • 現場の経理担当者にとって使いやすく設計されているか
  • 情報漏えい対策など、セキュリティ面が考慮されているか
  • 改正電子帳簿保存法やインボイス制度、新リース会計基準に対応しているか

なお、上記のポイントに加え、近年では「Fit to Standard」という考え方が主流になりつつあります。

「Fit to Standard」とは、従来のように自社の業務に合わせてシステムを大幅にカスタマイズする「Fit and Gap」ではなく、システムの標準機能に業務プロセスを適合させていくアプローチです。

導入コストや期間を抑えられ、システムアップデートへの対応も容易になるため、変化の激しい現代に適した考え方と言えます。

こうした導入アプローチも考慮しつつ、自社に合ったツールやシステムを選ぶことを意識しましょう。

 

セキュリティ対策を検討する

近年、企業を対象としたサイバー攻撃や、不正アクセスなどのセキュリティ上の脅威が増大しています。

情報処理推進機構(IPA)が2020年に行った調査によると、中小企業約1,100社に対し、社内アクセスへの侵入などを試みた不正アクセスの検知数は約18万1,536件にのぼります(※)。

経理DXでは、業務のIT化やデジタル化と同時に、セキュリティ対策を強化していくことが大切です。経理担当者のリモートワークを認める場合は、私的なパソコンでの業務を禁止するなど、情報セキュリティ規程を設ける必要があります。

※情報処理推進機構「DX、しませんか?サイバーセキュリティ、してますか?」p3
>> https://www.ipa.go.jp/security/sme/ps6vr7000001hnrl-att/000096352.pdf

 

まとめ

経理DXとは、データやデジタル技術を活用し、経理業務そのものを変革していく取り組みです。身近な経理DXの例として、伝票処理や仕訳を自動化する経理システムの導入や、帳簿書類のペーパーレス化などが挙げられます。

経理業務は、煩雑で手間のかかる定型的な作業が多いため、DXによる効果が期待できる分野の一つです。

電子帳簿保存法の改正や、インボイス制度に対応するためにも、経理業務のDXに着手しましょう。

最初からすべての経理業務を対象とするのではなく、身近なところから少しずつDX化を進めていくことが大切です。

経理業務における課題を洗い出し、優先度が高いものから順にIT化、デジタル化しましょう。

▼導入事例はこちら▼

>>経理業務BPRと法令対応(インボイス制度・電子帳簿保存法)に向けた属人化解消、システム導入を実現

ご支援実績 紹介

こちらでは弊社のご支援実績の一部をご紹介いたします。

ご支援の概要

業種業態:建設業(造園工事等)
事業規模:従業員350 名
支援期間:1 年

  • BPO可否測定:3 か月
  • システム選定:2 か月
  • インボイス対応・経理BPR/BPR:7 カ月(運用定着支援:2~3 か月を含む)

背景

経理業務のBPO化を見越して人材派遣サービスを導入したものの、BPOへのスムーズな移行が困難な状態。
また、インボイス制度・電子帳簿保存法対応に伴い、今後の業務ひっ迫も予想されていた。

課題

  • BPO化に向けた経理業務の既存プロセスの見直しおよび効率化・標準化 以下、BPR)
  • 法令対応

ご支援内容

  • 業務可視化
  • BPO受託範囲拡大に向けた、BPO業務の受託難易度の測定・BPR観点の経理知見の共有
  • 円滑な法令対応に向けたシステム導入

成果

1. BPO可否測定

  • 経理部担当業務のうち、BPO対象となりえる業務について業務一覧表を用いて可視化し、BPO委託可能な業務を整理。
  • BPO受託可能業務の想定工数を算出し、適正なBPOスタッフ要員数を算出。
  • BPO委託が難しいと判断された業務について、BPO受託範囲拡大に向け委託条件を整理。

2. インボイス対応・経理BPR(運用定着支援を含む)

  • 事業形態にあわせたシステム選定から導入時の業務フロー再設計、導入後の定着支援までをトータルで支援。
  • システム導入により、インボイス制度対応に係わる一部業務の自動化、リスクの高い本社の小口現金の一部廃止など、業務効率化を実現。
  • ユーザー部門向けに、システムのPC 、スマホアプリでの操作マニュアル、ビデオマニュアルの全10 マニュアルの作成や各拠点への訪問・説明等の運用定着支援を実施。
  • パーソルグループの株式会社アヴァンティスタッフともに業務調査から課題整理、BPR 、人材ソリューションの提供までを一気通貫で支援。

 

ご支援内容の詳細 ― 建設業界における経理業務のBPO化支援実績

背景・課題

本事例のご支援先では、人員の異動に伴い経理業務の業務改善改革(BPR)の手段としてBPO化を検討していました。

しかし長年の歴史を経て業務の属人化が進んでいたためにBPOへのスムーズな移行が困難(課題を見つけることが課題の状態)でした。

そこでBPOへ移行するための経理業務の業務改善と業務切り分けの見直し、同時に喫緊に迫ったインボイスや電子帳簿保存法の法令対応に取り組みました。

 

業務改善 改革(BPR)

BPO化を含む業務改善 改革(BPR:業務プロセス再設計)を実施するにあたり、主に下記3点を実施しました。

※BPRとは、既存の業務プロセスを見直し効率化と標準化を図る手法です

  1. 業務可視化 BPO業務の受託難易度の測定
  2. BPR観点の経理知見の共有
  3. 法令対応に向けたシステム導入

 

1.業務可視化 BPO業務の委託難易度の測定

既存の経理業務全体の流れを可視化すべく、先方に伺って経理部や事業部の経理業務担当者に現状をヒアリング・属人化されていた業務を可視化し、業務一覧表を作成しました。

このプロセスにより、各業務の内容(業務の手順や工数、担当者および関連事業部、適切なスキルレベル等)が明確になり、外部に委託可能な業務を判断するための基礎が整いました。


2. BPR観点の経理知見の共有

可視化した経理業務に対し、経理知識 経験・ガバナンスの観点からBPOの効果最大化にむけた課題の洗い出しを行いました。

その結果BPO受託が難しいと判断した業務のうち最大78%を受託できるようなBPO受託条件を整理し、BPO化に向けた業務の標準化に着手可能な状態を実現しました。

 

3. 法令対応に向けたシステム導入

プロジェクトの実施期間に重なっていたインボイス制度の開始と電子帳簿保存法への対応に向け、対応の抜け漏れを防ぐと同時に、法令対応に伴う業務ひっ迫を最小限に抑えるため、システム導入による業務の自動化・効率化を行いました。

導入したシステムを最大限に活用できるように運用ルールを整備するとともに、現場社員の要望や懸念点を吸い上げながら業務フローの再設計や導入後の定着までを伴走し、システム操作マニュアルの作成や拠点への訪問説明・システムに関する問合せ対応を実施、現場へのスムーズな定着を支援しました。

成果・お客様からの声

パーソルグループ内で連携し、業務BPRから人材ソリューション提供までを一気通貫で支援したことにより、目の前の法令対応や属人化の課題を解消しつつ、将来的なBPO化への道筋を明確にすることが出来ました。

また業務マニュアルの作成など業務標準化の土台を構築したことにより、「業務内容がシンプルになった」、「業務経験を活かしやすくなった」、「業務担当者の精神的な負荷が減少した」といったお声をいただきました。

さらに業務が共通認識されたことで、「経理情報を経理部門と事業部で共有できるようになり同じ情報を見ながらコミュニケーションを取れるようになった」といった声もいただいております。

▼導入事例はこちら▼

>>経理業務BPRと法令対応(インボイス制度・電子帳簿保存法)に向けた属人化解消、システム導入を実現

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